ホンジュラス内政・外交月報 〈2008年〉
Ⅰ.内政
1.サントス副大統領とミチェレティ国会議長の会談
6日、サントス副大統領はミチェレティ国会議長の地元であるエル・プログレソ市を訪問し、予備選挙以降初めて同国会議長と会談した。両者はミチェレティ国会議長の自宅で2時間に渡り会談したが、詳細については明らかにされなかった。サントス副大統領は報道に対し、「自由党を統一するためにやってきた」と発言するにとどめた。サントス副大統領は、ミチェレティを除く自由党の3人の大統領候補からの支持を既に取り付けている。
2.セラヤ大統領によるサントス副大統領の大統領候補容認発言
9日、セラヤ大統領は、サントス副大統領が来年の総選挙において大統領候補として立候補する準備は完了したと発言した。セラヤ大統領は、11月30日に実施された予備選挙ではサントス副大統領の対立候補であるミチェレティ国会議長を推しており、同副大統領もセラヤ大統領とは袂を分かっていた。予備選挙でサントス副大統領が代理候補としてビジェダ氏を立て勝利を収めた件につき同大統領は、自由党の大統領候補はサントス副大統領であり、そこには国民の意志が託されていると発言した。
3.ビジェダ候補(自由党)の大統領選挙立候補取り下げ
14日、サントス副大統領の代理として11月の予備選挙に大統領候補として立候補したマウリシオ・ビジェダ候補(自由党)が来年実施予定の総選挙への立候補を辞退する旨の書面をサントス副大統領に提出した。
4.サントス副大統領の大統領選挙立候補登録
予備選挙前にサントス副大統領が国会に辞表を提出し受理されなかった件につき、18日、同辞任を受理する国会の議決がなされ、これにより同副大統領の大統領選挙への立候補可能性が更に高まった。辞表受理を受け、19日未明、最高選挙管理委員会(TSE)は同前副大統領の大統領選挙への立候補登録を行った。同時にTSEはサントス派のビジェダ大統領候補の立候補取り下げについても受理する旨発表した。
Ⅱ.外交
1.SICA首脳会合の開催
(1)5日、当地サン・ペドロ・スーラ市で開催されたSICA首脳会合において加盟各国は、2009年より中米への影響が明確になるであろう金融危機に対処するため公共投資の拡大、農業生産性の向上による食糧安全保障の確保、中米経済統合銀行(BCIE)に対する協同出資、中米通貨評議会(Consejo Monetario Centroamericano)の強化等につき協議した。また今次会談において議長国をホンジュラスからニカラグアへと委譲するセレモニーも行われた(当館注:ニカラグアは実際には明年1月1日より議長国を務める)。
会合時に採択されたサン・ペドロ・スーラ宣言には、ALBA臨時首脳会談時にコレア・エクアドル大統領が主張した域内地域通貨案に基づき中米地域通貨の創設が議論された。オルテガ・ニカラグア大統領は記者会見の際に、地域統合以外に残された道はないとし、ニカラグアは既にチャベス・ベネズエラ大統領主導のALBAを通じて、右統合を実践していると発言した。
今次会合にはセラヤ大統領、オルテガ大統領の他、サカ・エルサルバドル大統領、コロン・グアテマラ大統領、ベガ・ベリーズ副首相、アルブルケルケ・ドミニカ共和国副大統領、ルイス・ナバロ・パナマ副大統領兼外相等が出席した。
(2)首脳会合に先立ち4日に開催された外相会談では、イタリア及びアルゼンチンのオブザーバー国加盟が承認された。現在両国の他にメキシコ、スペイン及び台湾がオブザーバー国として加盟している。オレジャナ当国外相は、両国の加盟によりSICAの制度が強化されると歓迎の意を表明した。
同外相は、5日のSICA首脳会合で正式に議長国がホンジュラスからニカラグアに移ると発言した。外相会談では、金融危機の他、EUやCaricomとの通商関係強化等が協議され、社会投資、教育、保健・衛生等に関する中米における社会的統合についてのコンセンサスが模索された。また同外相は、中米地域通貨の創出により経済的な自立が達成可能であるとし、右構想に期待する旨発言した。
2.セラヤ大統領の第1回ラ米・カリブ諸国首脳会合出席
(1)17日、ブラジルで開催された第1回ラ米・カリブ諸国首脳会合に出席したセラヤ大統領は、当国ジャニートス及びヒカトゥヨ水力発電ダムの建設へブラジルが4億ドルを融資することで合意したと発言した。本件については、ブラジルが4億ドル、米州開発銀行が1億ドルをホンジュラスに融資する。但し、電力公社(ENEE)の試算によると、両ダム建設には7億ドル以上が必要である。ジャニートスダムの発電能力は172キロワット、ヒカトゥヨ・ダムは98.2メガワットで、建設には前者が3億9,800万ドル、後者が3億7,900万ドルを必要とする。
(2)セラヤ大統領はブラジルに同行した当国記者団によるインタビューに対し、今次会合がOASに対抗するような組織作りを目指したものではないと述べ、ラ米・カリブが独自の組織を形成することの必要性を説くとともに、ビジネスだけではなく文化、教育、社会等に配慮した組織の構築を主張した。米国によるキューバへの経済封鎖解除や駐米OASラ米各国代表の召還を主張したとされるモラレス・ボリビア大統領の発言については、「オバマ政権が対ラ米外交を確立するまでの時間的余裕を与えるべきであるとしたルーラ・ブラジル大統領に同調するが、民族自決やイデオロギー多様性等の原則にかかるモラレス大統領の立場にも同調する」との姿勢を示した。
Ⅰ.内政
1.予備選挙の実施
(1)30日に実施された予備選挙で与党自由党ビジェダ候補(サントス副大統領派)と野党国民党ロボ候補(前国会議長)が各党大統領候補として選出された。全国選挙管理委員会が同日発表した途中結果は以下のとおり。
●自由党(開票率 30.49%)
(イ)ビジェダ候補(サントス副大統領派) 68,154票(52%)
(ロ)ミチェレティ候補(国会議長) 35,514票(27%)
(ハ)マルドナド候補(テレビ・キャスター) 23,742票(18%)
●国民党(開票率 35.5%)
(イ)ロボ候補(前党首) 162,396票(77%)
(ロ)カナウァティ候補(企業家) 41,160票(19%)
(2)副大統領職廃止問題
(イ)予備選挙に先立つ11日、最高裁憲法法廷は、検察による違憲審査請求を受け、副大統領職についての2003年の憲法改正を違憲とし、副大統領職の廃止を求める判決を下した。判決によると、2003年の第239条及び第240条の改正は憲法第374条に規定される改正不可能な条項(articulos petreos)の改正にあたるため違憲であり、現在の副大統領から改正前の「大統領代理(designados presidenciales)」へと戻すよう求めた。また改正前の条文は、選挙前6ヶ月間に「大統領代理」職を務めた者が大統領に選出されることを明確に禁じている。
現行憲法第239及び第240条には、副大統領の大統領立候補が可能か否かにつき明確な記述が見られないが、今次判決によりサントス副大統領は改正前の「大統領代理」に該当するため、2009年実施予定の大統領選挙への立候補の道が事実上絶たれたことになる。
(ロ)14日、ミチェレティ国会議長は右違憲判決を官報及び主要4紙に掲載するよう命じた。また国会は、最高選挙裁判所に対して、同違憲判決にあわせて大統領候補と副大統領候補がセット(フォーミュラ)となっていた投票様式を変更するよう求める旨の決議を全会一致で採択した。これに基づき同裁判所は各政党に対して、8日以内に従前の1名の副大統領候補に替えて「大統領代理」候補者3名を登録するよう命じた。但し、現在投票用紙に記載されている副大統領候補は自動的に「第一代理候補」として登録される。
(ハ)18日、サントス副大統領は、「自分は大統領となることを目指しているが、これを妨害しようとする数知れない動きがある」等として、国会本会議に辞表を提出した。その後、国会は辞任の理由が不明瞭であるとの理由より辞表を受理しない旨を決定するとともに、同副大統領は任期を全うすべきとした。併せて最高裁の違憲判決に基づき副大統領は大統領候補となることができない旨の決議を採択した。
2.制憲議会招集問題
(1)20日、ロサ・バウティスタ検事総長は、制憲議会招集の主張は憲法に反するため受け入れかねると発言した。昨今何人かの者が声を上げているこの件の背後には大統領の任期延長及び再選を企てるロダス自由党党首とカジェハス元大統領の陰が見え隠れする。同検事総長は、軍政を切り抜けたホンジュラスが民主制度安定のために制定した憲法を再選目的で改めることを批判した。同時に、改正不可能な条項(articulos petreos)の改正を試みる場合は、国民投票を通じて民意を問うことが必要であると述べた。
(2)21日、セラヤ大統領は、来年11月に予定されている総選挙において制憲議会招集の是非に関する国民投票もあわせて行うべきである旨発言した。この件につき、同大統領が、ベネズエラ、ボリビア、エクアドルのケースに続いて、権力の座に居座るために国民投票を呼びかけているのではないかとの懸念も存在する。セラヤ大統領は、来年1月に国会に本件に関する法案を国会に提出する可能性に言及するとともに、既にロボ大統領候補(国民党)、ミチェレティ国会議長及びカジェハス元大統領と協議したと発言した。
セラヤ大統領によると、来年11月に予定されている総選挙においては、(1)大統領及び大統領代理3名、(2)国会議員、(3)市長及び市議会議員が選出されるが、「4番目の投票」として制憲議会招集の是非を国民に問う。同大統領は、右制憲議会招集の目的は自身の任期延長ではなく、(最近のサントス副大統領の立候補の可否の問題等)多種の解釈を招来してしまう現在の憲法をより明確なものにすることが本来の目的であると発言した。
Ⅱ.外交
1.米国大統領選挙結果に関するセラヤ大統領発言概要
(1)5日、セラヤ大統領は、米国大統領選挙における民主党・オバマ候補の勝利を受けて、右勝利を祝福するとともに、両国関係の改善が期待出来る旨発言した。同大統領はオバマ候補の勝利が人種差別の敗北を証明するものであると述べるとともに、ガリフナ等当国の黒人系住民を同勝利を誇りに思っているに違いないと発言した。
(2)セラヤ大統領は米国に行きオバマ候補を個人的に祝福するとし、同時にその機会を利用して同候補の中米訪問を打診すると発言した。同大統領は、不法移民が就労許可を得られるような改革を求めたい旨述べるとともに、ホンジュラスと米国との間に自由貿易協定が存在するからには、人の自由な移動に関する協定が存在して然るべきであるとし、オバマ候補との中心的議題を移民問題に設定する旨発言した。またセラヤ大統領は右提案を、移民によって離ればなれになった家族が再会を果たすことは人権の範疇であり、国際法に抵触することはないと正当化した。
(3)5日の発言では、セラヤ大統領は最近特に顕著となってきた反米発言を抑制したのみならず、オバマ候補のいくつかの公約について共感できると述べるとともに、同候補の演説が革命的であると発言した。この他、米・ホンジュラスの二国関係の強化は米州ボリーバル代替構想(ALBA)からの脱退にはつながらない、パルメローラ米軍基地に駐在している米南方軍は人道活動にも従事しているので退去を求めることはない、等と発言した。
2.米国からの強制送還者数に関する政府発表
(1)アルバラド移民・外国人局長官によると、2008年の米国からの強制送還者数が11月10日現在で2万6,471人に達した。この数値は1年間で2万9,348人を記録した昨年とほぼ同じペースである。同長官は、セラヤ政権下における対米関係の悪化が強制送還者数増加につながっているとの見方を否定した。なお、2万6,471人の内、男性が約2万3千人で、未成年は4百人。
(2)同局発表の強制送還者数の推移。
(1)1997年 3,922人
(2)1998年 4,631人
(3)1999年 4,105人
(4)2000年 4,876人
(5)2001年 4,584人
(6)2002年 5,551人
(7)2003年 7,555人
(8)2004年 9,397人
(9)2005年 18,941人
(10)2006年 24,643人
(11)2007年 29,348人
3.ニカラグア内政不安定化に関するホンジュラス政府の対米批判
(1)13日、ホンジュラス政府は、在ニカラグア米国大使館がニカラグアにおける内政不安定化の雰囲気を醸成し、市長選挙におけるサンディニスタの勝利に対する抗議活動を背後から支援している旨批判した。右批判は、ヒメネス大統領法律顧問が、同趣旨の米州ボリーバル代替構想(ALBA)加盟各国によるコミュニケを読み上げつつ行った。
(2)ヒメネス大統領法律顧問(前外相)は、在ニカラグア米国大使の支援を受けたニカラグアの右派勢力が暴力を用いるとともに、民主制度の否定をし、同国不安定化工作を行っていると批判し、米国によるニカラグア内政干渉を拒絶する旨発言した。
4.一時的身分保証(TPS)再登録期間の延長
(1)20日、レイナ大統領顧問は、米国政府が、セラヤ大統領の要請に応じて米在住ホンジュラス人移民の一時的身分保証(TPS)再登録期間を30日間延長する旨発表した。同顧問は、9月末に米国政府がTPSの18か月延長を発表したにも関わらず、同国に居住するホンジュラス人は右に伴う再登録手続きを行っていないと遺憾の意を表明した。
(2)今次再登録期間の延長により、従前11月30日までのものが12月30日へと変更された。セラヤ大統領の要請は、種々の理由により再登録手続きを行えずにいる在米ホンジュラス人に配慮したものである。
Ⅰ.内政
1.集中豪雨被害
10月初旬からの長雨に続き15日から17日にかけて熱帯性低気圧16号がもたらした集中豪雨により、約18万人が洪水や地滑りの被害を受けた。20日、セラヤ大統領は国家非常事態宣言を発出して対策に当たるとともに、国際社会に対して支援要請を行った。これを受け、我が国を含むドナー各国・機関から様々な緊急支援が実施された。
2.予備選挙の延期
(1)29日、セラヤ大統領及びフローレス大統領府大臣は、集中豪雨被害に伴い国内全土で80%の交通網が寸断されていること、国軍兵士が救済動員へ総動員されていること等を理由に、11月16日に実施予定の予備選挙を同月30日に延期するよう提案した。
(2)同提案に対しては、当初与野党の有力大統領候補等からの反対もあったが、種々の交渉を経て30日夜、政府及び野党各党を含む政党関係者は大統領府で会合し、軍による選挙用品の国内各地への配布等が水害対応のために予定通りできないこと等に鑑み、予備選挙を11月30日に延期することで全会一致で合意した。
3.世論調査結果
10月に公表された各種世論調査結果は以下のとおり。
(1)ラ・プレンサ紙(CID-GALLUP社による9月27日~10月4日の全国調査結果。)
(イ)セラヤ大統領についての評価
(a)非常に良い 6%
(b)良い 19%
(c)どちらともいえない 37%
(d)悪い 18%
(e)非常に悪い 18%
(昨年初めをピークに評価は下降を続けてきたが、今回も前回から更に評価が下がり、全体評価が初めてマイナスとなった。即ち「良い評価の合計」マイナス「悪い評価の合計」が前回は0であったが、今回はマイナス11ポイントであった。)
(ロ)セラヤ政権の腐敗度について
(a)前政権より悪い 53%
(b)前政権と同じ 34%
(c)前政権より良い 11%
(ハ)大統領選予備選挙について
今投票するとすれば、誰に投票するか
(自由党員の回答)
(a)サントス副大統領 32%
(b)ミチェレティ国会議長 18%
(c)マルドナドTVキャスター 17%
(注)サントス副大統領は最高選挙裁判所から立候補資格を認められていないので(10月時点)、同副大統領が代理として指名したビジェダ候補を支持する旨の回答も同副大統領への回答として計上されている。
(国民党員の回答)
(a)ロボ前党首 51%
(b)カナワティ候補 13%
(ニ)政界人の評価
好意的評価の多い人物上位5人(数値は好意的評価)
(a)フローレス元大統領 53%
(b)マドゥーロ前大統領 50%
(c)サントス副大統領 46%
(d)ロボ国民党前党首 44%
(e)フローレス国会副議長 44%
(2)ティエンポ紙(Borge y Asociados社が9月25日~10月10日に自由党員を対象に実施した全国調査。)
大統領予備選挙について今投票するとすれば誰に投票するか。
(a)ミチェレティ国会議長41%
(b)ビジェダ候補(注:実質的にサントス副大統領に対する支持)25%
(c)マルドナドTVキャスター 24%
Ⅱ.外交
1.SICA首脳会議開催
(1)4日、ホンジュラス大統領府においてSICA首脳会議が開催された。会議には中米5か国の大統領及びパナマの副大統領らが出席し、セラヤ・ホンジュラス大統領が議長国首脳として議長を務めた。会議では、米国金融危機への対応等について討議され、次のような措置に合意された。なお、会議においてベネズエラとのペトロカリブ協定に基づく低利借款の活用についても提案されたが、エルサルバドルが同協定に参加しないとの明確な立場を伝えたため、合意には含まれなかった。
(イ)米国発の世界的な金融危機に対処するため、中米統合銀行(BCIE)に対して各国毎に4億ドルまでのクレジットラインを要請する。うち2億ドルは中銀向け、2億ドルは一般銀行向けとする。
(ロ)経済社会問題におけるカリブ、アジア、南米との戦略的連携を促進する。
(ハ)中米域内の貿易は2007年に52億7千万ドルに達したが、これを更に促進する措置を検討する。
(ニ)食糧増産のための借款供与などからなる「中米食料安全保障強化計画」を30日以内に策定するよう各国農業大臣に指示する。
(ホ)EUとの連携協定交渉を加速させる。
(ヘ)中米関税同盟のプロセスを前進させる。
(2)各国首脳の主要発言は次のとおり。
(イ)セラヤ・ホンジュラス大統領
中米においても世界的な金融危機の影響がすでに出始めているが、各種政策を確立してこの危機を発展の機会に変えていくことが可能である。
(ロ)サカ・エルサルバドル大統領
米国の金融危機の影響を懸念する。エルサルバドルは石油を輸入していないので、今のところALBAやペトロカリブ協定への参加は考えていない。
(ハ)オルテガ・ニカラグア大統領
米国の金融危機は資本主義制度の病理の現れである。ニカラグアにとり、第一の市場は中米であり、次いで米国であるが、もう一つの市場としてALBAの下でベネズエラの市場が開かれつつある。
(ニ)コロン・グアテマラ大統領
BCIEによる4億ドルのクレジットラインが実現すれば中米各国における資金流動性の問題を解決できるかもしれない。
(ホ)アリアス・コスタリカ大統領
コスタリカの第一の貿易相手国は米国であり、次いで中国である。今後も輸出先の多角化を目指す。米国の金融危機の影響として特に懸念するのは、コスタリカの主要収入源となっている観光産業に対するものである。
2.ALBA加盟に関する国会批准
(1)9日、ホンジュラスのALBA加盟文書を批准する決議が国会で可決された。同決議は10日付官報に掲載され発効した。与党自由党及び少数野党3党が賛成し(数名の造反議員はいた。)、最大野党の国民党は採決時に挙手をせず棄権した。ミチェレティ国会議長(与党次期大統領候補、10月時点)は喉の手術後の療養のためとして欠席した。
(2)賛成多数を得るために、批准決議文に概要次のとおり追加がなされた。
(イ)前文に、「ALBA加盟宣言は、ホンジュラスの自由、主権及び自決権を損なう如何なる義務も含まず、軍事、政治、イデオロギー的要素を含まず、憲法をはじめとする法的枠組みを傷つけないことを考慮し、」との趣旨を追加。
(ロ)前文に、「憲法上、如何なる当局もホンジュラスの領土一体性、主権及び独立を損なう条約を締結し、譲許を与えることはできず、それを行うものは国家反逆罪により裁かれることになることを考慮し、」との趣旨を追加。
(ハ)本文に、「ALBAの実施状況をフォローアップするために、国会はフォローアップ特別委員会を任命し、同委員会は行政府から3か月ごとに報告を受け、国会本会議に対して6か月ごとに報告を行う。」との趣旨を追加。
(3)本件採決のための本会議は前8日に突然招集され、地方出身議員が議場に集まるまでに時間を要したが、9日午後に約3時間の審議を行った後、直ちに採決された。事前に政府は議員達に対して様々な圧力をかけたとの報道も見られたが、当局者はこうした噂を否定した。
ミチェレティ国会議長がALBA批准を容認する立場に変わった背景として、セラヤ大統領との水面下での合意があったとの見方が根強い。
(4)セラヤ大統領は外遊先のコロンビアにおいて、「ALBA批准はミチェレティ国会議長が国民を愛していることの証左である。」旨述べ、大きな喜びを表した。国会周辺に集結していた左派系諸団体はALBA批准に満足の意を表明した。また、採決時に棄権した国民党は、「ALBA署名はひとえに自由党政府の責任である。国民党は貧困層に裨益するとされる措置に反対することはしないが、今後、措置の実効性について監視していく」とした。
この他財界関係者は、本件批准について「チャベス・ベネズエラ大統領は、いずれALBAを通じた支援の対価を取り立てにくるであろう。」等と懸念を表明した。
3.セラヤ大統領のコロンビア訪問
(1)9日、セラヤ大統領はコロンビアを公式訪問し、ウリベ・コロンビア大統領らと会談した。
(2)訪問中、国会での批准手続き中である両国間自由貿易協定について意見交換がなされたほか、次のような合意がなされた。
(イ)経済危機に対処するため、域内各国の協力を強化する。
(ロ)新たな機会及び貿易・投資の多角化を目指し、世界経済との接近を図るべきである。
(ハ)暴力、組織犯罪への対策を強化する。
(ニ)バイオディーゼル等、ホンジュラスのエネルギー分野へのコロンビア企業の投資を促進する。
Ⅰ.内政
1.独立記念式典におけるセラヤ大統領発言
(1)15日、独立記念日の記念式典においてセラヤ大統領が演説を行った。演説においてセラヤ大統領は、国内の経済有力グループは腐敗しており、不公正な経済システムを推進して当国の貧困や発展阻害の原因となっていると批判した上で、このグループは何としてでも現在の地位を維持しようとしており、ホンジュラスがモラサン将軍、シモン・ボリーバル、キューバのマルティの理想を結集させて自由、独立、主権を守ろうとすることに反対し、ホンジュラスの第2の真の独立の一歩となる、貧困層を対象とした支援を行うALBAに反対していると述べた。
(2)また、演説の最中、聴衆からは「チャベス大統領のシンパは出て行け」との反発の声があがり、これに対しセラヤ大統領は、「君たちのような、保守的で隷属化された、自由と独立の敵であり最も保守的で反動的な薄暗い場所から出てきたコウモリに対して私は話をしている」と述べた。
2.大統領任期に関するセラヤ大統領批判
(1)11日、ミチェレティ国会議長はテレビの討論番組において、セラヤ大統領が憲法で定められている任期を超えて権力の座にとどまるために15日に自作クーデターを計画しているとの複数の情報を得たため、2日にセラヤ大統領に直接確認したところ、セラヤ大統領はそのようなことは全くないと断言したことを明らかにした。
(2)バスケス参謀総長は、軍は憲法を尊重しており、クーデターがあるという噂を流して軍のイメージを傷つける人々がいることを残念に思うと述べた。
3.保健大臣の交替
(1)30日、セラヤ大統領はパロウ保健大臣の辞表を受理し、後任にアギラル現保健次官を任命した。アギラル新大臣は2日に就任した。
(2)パロウ大臣は、最近の公立病院の医師・看護士の賃上げ要求スト長期化や、私立カトリック大学の医学生を国立大学病院で研修させる協定の是非等の諸問題への対応をめぐり、セラヤ大統領から十分な政治的支援が得られないとして公に不満を表明していた。セラヤ政権下でアギラル新大臣は4人目の保健大臣となる。
Ⅱ.外交
1.米大使の信任状捧呈式延期
(1)モラレス・ボリビア大統領が米国による同国に対する内政干渉を理由に駐ボリビア米大使にペルソナ・ノングラータを宣告したことを受け、12日に行われることになっていたロレンス駐ホンジュラス米大使の信任状捧呈式が、当日の朝になって延期された。
(2)本件につきセラヤ大統領は、右延期の理由として、内政干渉への反対を訴えている貧しい小国ボリビアのモラレス大統領への連帯を示すためであるとしつつも、単に儀礼的な式典を延期しただけであり、米国を挑発したり同国との外交関係を断絶したりするようなことは欲していないと発言した。また米国による小国に対する尊重を訴えたが、本件が米国との経済関係や人的関係を損なうことはないと考える旨表明した。
(3)これに対しロボ前国民党(野党)党首は、セラヤ大統領が在米ホンジュラス移民による本国送金で生活している何千人ものホンジュラス人や、米国への輸出により生み出される雇用につき等閑視していると批判した。
2.ペトロカリブ協定実施法の国会承認
(1)23日、国会においてペトロカリブ協定の実施法(正式名称:ペトロカリブ・エネルギー協力協定に由来する資金の管理及び投資に係る特別法)が成立した。これに対し最大野党の国民党は途中退席し、それ以外の政党による審議の結果、可決された。
ペトロカリブ協定に由来する資金(2009年末まででは3億4500万ドル)は、次のとおり使用される。
(イ)40%は水力発電及びその他の再生可能エネルギーのプロジェクトのために
(ロ)30%は電力公社(ENEE)の効率性向上のために
(ハ)30%は農林業、住宅、道路プロジェクトのために
(2)発電及び電力公社に使われる資金は中銀から直接融資され、民間プロジェクトに対する融資はホンジュラス生産住宅銀行(Banhprovi)を通じてなされる。
(3)資金の適正使用を監督する透明性委員会が設立され、大統領府大臣、人権オンブズマン、石油運営委員長、カトリック教会、福音派教会、国家腐敗対策委員会がメンバーとなる。
3.国連総会におけるセラヤ大統領演説
(1)24日、セラヤ大統領は国連総会において演説を行い、ホンジュラスで進行する貧富の差の拡大、民営化の進捗による国家の弱体化、資本の少数企業への集中等を批判し、資本主義の拡大に伴う麻薬、武器、人身の国際取引などの問題が発展途上国の自由と経済的独立を阻害していると発言した。
(2)この他、20年間にわたったホンジュラスのコーヒー輸出の努力が最近1年足らずの石油・エネルギー価格の高騰により無となりつつあることを指摘し、国連が2000年に打ち出した貧困削減目標の達成は困難であり、国際社会が発展途上国にオファーした資金協力の約束も達成されていないと糾弾した。その上でセラヤ大統領は、国家と経済を支配する帝国主義システムは地上から消え去るべきであり、新自由主義経済を押しつけるようなコンディショナリティーを付けることなく、協力受け入れ国のシステムを尊重するよう先進諸国に要請した。
(3)またセラヤ大統領は、G8はメキシコ、ブラジル、ボリビア、キューバ、インドをメンバーに加えるべきであり、中米、メルコスールなども対話の拡大を通じて貢献できる、また安保理の拡大も世界が求めているとの見解を示した。また、自由と平和を求める考えにのっとりALBAに署名したと述べるととともに、台湾に対する国際社会の連帯を要請した。
4.一時的身分保証(TPS)の延長
(1)26日、米国政府は在米ホンジュラス人に対する一時的身分保証(TPS)を18か月間延長する旨発表した。TPSはハリケーン・ミッチのために米国に不法移民した人々に対する人道的見地から98年12月に出された特別滞在許可であり、これまで累次にわたり延長されてきた。今回の8回目の延長により、7万2千人の在米ホンジュラス人が2010年7月5日まで米国に合法的に滞在できることとなる。
(2)在米ホンジュラス人からの本国送金は2007年に総額25億6千万ドルに達している。
(3)セラヤ大統領は、「本件延長により対米関係は緊密化した。ロレンス駐ホンジュラス米国大使は本件延長に特別に配慮してくれた。」旨述べ、レイナ大統領私設秘書(前外務次官)は、「本件は政府の政策に反対する者達にとり打撃となる。」旨述べた。
Ⅰ.内政
(1)サントス副大統領の立候補失格
24日、最高選挙管理委員会は、サントス副大統領が既に大統領の代理として大統領の職を務めたことがあり、憲法では行政府の長を務めた人物が大統領となることが禁止されていることを理由にサントス副大統領の立候補を失格とすることを発表した。サントス派は最高選挙管理委員会の事務所の前で抗議を行い、失格を取り消すように求めたが、受け付けられなかった。サントス副大統領は、最高裁判所に判断を求める意向であり、その間の代理候補としてマウリシオ・ビジェダ氏をサントス派の大統領候補とすることとした。
(2)外務次官ポストの追加
26日、外務省に新たに移民担当外務次官及び統合担当外務次官のポストを設け、移民担当次官には外務省のロサレス対外政策局長が就任(注:対外政策局長と兼任)し、統合担当次官にはリコナ女史が就任することが発表された。
(3)職業訓練庁長官の辞任
職業訓練庁の労働団体が汚職を理由にサンブラノ長官の辞任を求めて抗議活動を行っていたところ、21日、同長官が辞職した。
(4)女性庁長官の辞任
22日、エストラダ女性庁長官は、25日の署名式に義理の娘へのセクハラで訴えられているオルテガ・ニカラグア大統領が来訪することに反対すると述べ、オルテガ大統領を招待しているホンジュラス政府の方針との違いを理由に辞表を提出した。後任にはガルシア商工省次官が就任した。
(5)サントス副大統領による大統領批判
8日、サントス副大統領は、セラヤ大統領がALBA加盟文書の国会批准を得るために、国会議員に対し国会への補助金という名目で百万レンピラの裏金をわたしていると発言した。これに対し、セラヤ大統領や国会議員は、事実に反するとして発言の撤回を要求した。14日、セラヤ大統領とサントス副大統領が会合を行い、セラヤ大統領は和解したと発表した。
Ⅱ.外交
(1)ALBA加盟文書への署名
25日、ホンジュラスのALBA加盟文書への署名式典がテグシガルパにて開催され、ALBA加盟国からはチャベス・ベネズエラ大統領、モラレス・ボリビア大統領、オルテガ・ニカラグア大統領、ラヘ・キューバ国会評議会副議長、ドミニカ国代表(公共事業大臣)が出席した。当日、セラヤ大統領はホンジュラスのALBA加盟宣言に署名し、セラヤ大統領及びALBA加盟国の各国大統領・代表はホンジュラスへの支援を行うことを含む共同宣言に署名した。(9月9日、フローレス大統領府大臣はこれらの宣言を国会に提出し承認された。
(2)セラヤ大統領のパラグアイ及びドミニカ共和国における大統領就任式出席
セラヤ大統領が、15日のルーゴ・パラグアイ新大統領就任式及び16日のフェルナンデス・ドミニカ共和国大統領の就任式に出席した。
(3)セラヤ大統領のメキシコ訪問
20日、セラヤ大統領がメキシコを訪問してカルデロン墨大統領と会談を行った。メキシコ大統領府のプレスリリースによると、会談では二国間及び地域内における治安、貿易、投資及び両国間や地域内における開発のための協力等について協議が行われた。
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